Question.
綿布に直接油彩を描きたいのですが、劣化、変色等が気にかかります。膠やボンド水で目止めをし、その上からなら油彩は大丈夫でしょうか?Answer.
綿布への直接油彩は、繊維の経年劣化を油が促す形になりますのでお勧めしかねます。目止めなさって下さい。変色はありません。(あっても画面側からはよく判らない程度でしょう)木綿は麻よりも繊維素(セルロース)の含有量が多く、繊維が柔軟で、環境(特に湿度)に敏感に反応して伸縮します(繊維が捻れていてバネのように伸び縮みします)。油彩画面は乾燥するとガチガチの硬い塗膜になりますから、木綿のような動きを伴う下地だと、地震上の家屋のような状態になって剥落等を起こします。
経時変化での脆弱化傾向も麻よりも木綿の方が大きくなります。アクリル制作ではコットン キャンバスが多用されますが、それはアクリル自体が柔軟で撓(たわ)み性に富み、コットン キャンバスの動きを吸収して問題を起こさないからです。 キャンバス業者は目止めに膠やPVA(ポバール)を用います。アクリル樹脂(グロス メディウム)でもかまいません。水性ボンド(木工用ボンド)は適しません。経年劣化して崩れますから土台の意味を為しません。
膠の目止めは古典からずっと行われてきたやり方であり、ホルベインの顔料カタログにもそのやり方が記載されていますから、お近くの画材店で入手なさって下さい。塗布する時は26~27℃を目安にしてください。それより高い温度だと裏までしみ通りますし、低いとゲル状になってうまく塗れません。 ポバールは文房具店頭の透明な液体糊、日用品店頭の洗濯糊の形で入手できます。成分表に「PVA」、「PVa」などと表示されています。
グロス メディウムはそのままだと刷毛が引っ張られて塗りにくいので、少し水で薄めて二度塗りした方がきれいに塗れます。
目止めはすべて水性形態で作業を行いますから繊維に多量の水分がしみ込みます。数日かけてしっかり乾かして下さい。さもないとその次の油層がきちんと食いつかず、数年後に下地層ごと画面が剥がれる原因になります。


